丸い人間になりたい!良い年のとり方をするための六か条

いい年のとり方をしたいもんです。おじいちゃん、おばあちゃんって温厚で心の広い、丸い方が多いじゃないですか。あんな年のとり方を出来たらいいなー、というかイマすぐに丸くなることは出来ないのかいな?と思う一方、頑固で我が強いお年寄りがいるのも事実なので、それらの違いがなぜ生まれるのか?も含めてまとめてみたいと思います。

年を取ると性格が丸くなるのは本当か?

加齢によって人の性格が穏やかになるという説は、単なる気休めや迷信ではなく、心理学や脳科学の研究によって以下の2つの視点から説明されます。

1.性格の成熟原則

心理学の分野では、人の性格を分類する指標としてビッグファイブと呼ばれる理論が広く用いられています。詳しくは過去の記事を参考にしていただければと思いますが、これは、人間の性格を以下の5つの要素に分類して分析する手法です。

  • 協調性
    他人に対する思いやりや共感性

  • 誠実性
    自分の感情や行動をコントロールする力

  • 神経症傾向
    不安やイライラ、感情の起伏の激しさ

  • 外向性
    社交性や活動性

  • 開放性
    新しい体験や知識への関心

この理論を用いた大規模な追跡調査により、人間は年齢を重ねるにつれて、協調性と誠実性が高まり、反対に神経症傾向は低下していく傾向があることが分かっています。

心理学ではこの現象は性格の成熟原則や、社会情緒的選択理論と呼ばれているもので、人は人生の残り時間を意識するようになると、無用な争いやストレスを避け、限られた時間の中で良好な人間関係や心の平穏を優先しようとする心理的な適応を起こすと考えられています。

2.感情制御ネットワークの確立

脳科学的な視点からも、この変化は明確に説明できます。人間の脳内には、以下のような役割分担が存在します。

  • 扁桃体:恐怖や怒りといった感情の発生源となる部位

  • 前頭葉:感情を抑制し、理性的で冷静な判断を下す部位

この扁桃体と前頭葉をつなぐ神経ネットワークは、青年期から中年期にかけて少しずつ成熟を続けていきます。

さらに、人間は成長の過程でさまざまな人生経験を積むことにより、予期せぬトラブルに対する対処パターンを脳内に蓄積していきます。その結果、多少の不都合や想定外の事態に直面しても感情が乱されにくくなり、落ち着いた対応が可能になります。

心理的な価値観のシフトと脳機能の成熟という2つの側面が重なり合うことで、年齢とともに感情が安定し、他人に対して寛容になる基礎が作られていくのです。

丸くなる人と意地悪になる人に二極化する理由

周囲を見渡すと、年齢とともに仏のように穏やかになる人がいる一方で、怒りっぽく攻撃的な性格になってしまう人も存在します。この二極化が生じる背景には、主に4つの要因が複雑に絡み合っています。

1. 元々持っていた性格の顕在化

若いうちは会社での立場や家庭での責任、世間体といった社会的な抑圧があるため、多少怒りっぽかったり自己中心的であったりする性格も表面化しにくい傾向にあります。

しかし、退職や子育ての終了によって社会的役割から解放されると、周囲に合わせる必要性が薄れます。その結果、若いうちは理性や環境によって隠せていたネガティブな性格の側面が、抑えを失ってそのまま表に出てしまうことになります。

2. 前頭葉の萎縮による感情ブレーキの低下

前頭葉は脳の中で感情のブレーキを司る重要な部位ですが、実は加齢による影響を最も早く、強く受ける場所でもあります。

前頭葉の機能が低下すると、不快な感情を抑えるコントロール力が弱まり、思ったことをストレートに口に出してしまったり、衝動的に怒りを破裂させたりするようになります。これは本人の意志や人格の問題というよりも、脳の生理的な変化による影響が大きい現象です。

3. 社会的孤立と自己客観化の機会の減少

年齢とともに仕事や地域社会との関わりが減ると、自分の言動に対する他者からの客観的な指摘やフィードバックが得られなくなります。

自分の考えを客観的に見つめ直す機会が失われることで、自己中心的な思考が強まりやすくなります。その結果、他者の意見を受け入れられない頑固さや、周囲への疑心暗鬼が生じやすくなってしまうのです。

4. 認知機能の低下や脳疾患の影響

記憶障害などの目立った症状が現れる前に、感情のコントロールができなくなったり、他者への共感性が欠如したりするタイプの認知症が存在します。

具体的には、前頭葉や側頭葉が萎縮することで人格変化や社会的行動の障害が起こる前頭側頭型認知症などが挙げられます。急激に人が変わったように意地悪になったり攻撃的になったりした場合は、個人の性格のゆがみではなく、脳の疾患が直接的な原因となっているケースもあります。

性格を丸くし意地悪な年の取り方をしないための具体的実践法

加齢による自然な変化を待つことなく、今すぐ心を穏やかにして性格を丸くすること、そして頑固で攻撃的な性格にならないように予防することは、同じ日常の取り組みによって同時に達成できます。

性格を丸くするとは、単に自分の意見を殺して他人に合わせることではなく、自分の感情を正しくコントロールし、他者との違いを無理なく受け入れられる状態を作ることです。ここでは、日常生活で取り入れられる具体的な実践方法を6つ紹介します。

1. メタ認知を意識して感情を観察する

メタ認知とは、自分自身の思考や感情、行動を、まるで頭上から見下ろすようにもう一人の自分が客観的に認識・観察する能力のことです。

日常の中でイラッとしたり怒りが湧いたりした瞬間に、その感情に呑み込まれるのではなく、自分は今怒っているという事実を頭の中で客観的に言語化してみましょう。

  • なぜその出来事に怒りを感じたのか

  • どの部分が自分の許容範囲を超えたのか

このように客観的に分析を行うことで、感情を司る扁桃体の過剰な活動が抑えられ、理性を司る前頭葉が動き出します。この思考の切り替えにより、衝動的な攻撃や不機嫌な態度をその場で防ぐことができます。

2. メンタライジングを深めて他者の背景を推測する

メンタライジングとは、自分や他者の行動の裏にある心模様や意図、信念、欲求などの精神状態を推測し、理解しようとする心理的なプロセスのことです。

自分にとって理不尽な行動をとる人や、不快な態度をとる人に出会ったとき、相手を攻撃的で嫌な人間だと決めつけるのを少しお休みしてみましょう。

  • 相手がなぜそのような行動をとったのか

  • 何か強いストレスや焦りを抱えているのではないか

  • どのような背景があってその考えに至ったのか

このように相手の文脈を意識的に推測していきます。相手の言動の理由に思いを馳せることで、相手を倒すべき敵として見るのではなく、困りごとを抱えた存在として捉えられるようになり、自然と寛容な態度が生まれます。

3. スキーマを緩めて多様な価値観を受け入れる

心理学におけるスキーマとは、これまでの経験や学習によって作られた、物事の捉え方や判断の枠組み、固定観念のようなものを指します。

怒りやイライラの多くは、社会人はこうあるべきだ、普通はこうするべきだといった、自分自身が保持している強い認知のスキーマが破られたときに発生します。このスキーマを絶対的な正解と考えず、自分にとっては正解だが相手にとってはそうではないかもしれないという視点に切り替えてみましょう。

世の中には多様な価値観が存在することを前提として捉え、自分と異なる行動に対してもそのような考え方もあるという受け止めの枠組みを広げることが、柔軟で丸い性格を作る上で重要な考え方です。

4. 脳の可塑性を活かして前頭葉へ刺激を与える

脳の可塑性とは、新しい体験や学習、刺激に応じて、脳の神経回路が変化し再構築される性質のことです。

前頭葉の萎縮を防ぎ、感情のコントロール力を衰えさせないためには、この可塑性を活かして、慣れ親しんだルーティン作業から抜け出し、脳に適度な負荷をかけることが有効です。

  • これまでやったことのない趣味に挑戦する

  • 行ったことのない場所へ出かける

  • 手先を使って料理や工作をする

  • 新しい知識や言語を学ぶ

こうした行動は脳の神経ネットワークを活性化させます。失敗したり試行錯誤したりする過程そのものが、感情のブレーキ機能を鍛える強力なトレーニングになります。

5. ソーシャルネットワークを多様化させて居場所を増やす

ソーシャルネットワークとは、単にSNSという意味だけでなく、家族、友人、職場、地域社会など、個人を取り巻く人間関係の繋がり全体を指します。

所属するコミュニティが一つしかない場合、そこでの評価や関係性に依存してしまい、執着や攻撃性が高まりやすくなります。職場、趣味の集まり、地域活動など、性質の異なる複数の居場所を持つことで、一つの場所でうまくいかないことがあっても心に余裕を保てるようになります。

また、異なる年齢層や立場の人々と関わることで、自分自身の考え方を客観的に見つめ直す機会が日常的に得られ、独善的な考えに陥るのを防ぐことができます。

6. 自己開示を行い自分の弱さを素直に認める

自己開示とは、自分自身の感情、考え、過去の経験、あるいは自分の弱みや失敗といったプライベートな情報を、ありのまま他者に伝えることです。

年齢を重ねて意地悪になってしまう人の多くは、自分の衰えや間違いを認められないという過剰なプライドに囚われています。プライドを守ろうとする防衛本能が、周囲に対する攻撃性や頑固さとして現れてしまうのです。

若いうちから以下のような行動を意識的に行ってみましょう。

  • 分からないことは素直に人に尋ねる

  • 間違いを指摘されたら素直に謝罪する

  • 人の助けを気持ちよく借りる

自分の完璧さにこだわらず、素直に弱みを見せられる柔軟性を身につけておくことが、将来的に周囲から愛される穏やかな高齢者になるための最も確実な備えとなります。

まとめ

年齢を重ねることで性格が丸くなるのは、心の心理的適応と脳の成熟による自然なプロセスです。しかし、何も対策をしなければ、元々の性格の露出や前頭葉の萎縮、社会的孤立によって、意地悪で攻撃的な性格へと変化してしまうリスクも存在します。

性格を丸くし、将来にわたって穏やかな人間関係を維持するためには、感情を客観視する思考法や他者への共感性を日常的に磨くことが大切です。また、新しいことに挑戦して脳を刺激し、多様な人間関係の中で自分の弱さを素直に認められる柔軟性を育んでいきましょう。

まあつまりは、人とのつながりを保ちつつ、多様な経験を積み重ねていく、その中で好奇心を発揮していくのが大事ってことですんで、平らな道ではなさそうですな~。ガンバロ。