ASIってあるじゃないですか。Artificial Superintelligenceの略で、人間の知能をあらゆる面で遥かに超える「人工超知能」のことで、このままAIが発展し続ける未来には、人間に代わってすべてのことをAIがやってくれるようになる、しかも人間を遥かに凌駕するクオリティで。みたいなやつです。
イーロン・マスクも仕事はすべてAIが行い、お金という概念もなくなる!って言ってたりしますが、これは単一の超知能が生まれる、あるいは作るからってことなんでしょう。
しかし、最近のAI研究では、こんな未来を否定する内容になっていて一安心というか夢から覚まされるという感じでしたので共有です。(R)
この論文の結論はシンプルで、AIをチームメイトとして招き入れなされ!ってもので、今後の仕事や私生活の中でAIをどのように使えば人間が最も高い能力を発揮できるのか?を教えてくれていて勉強になります。
単一の超知能aiを待つのもいいんだけど、少なくとも現段階では後述するステップでaiを使うのがいいと思います。
そもそも知能とはなんぞや?
AIの正しい使い方を見ていく前に、なぜ単一の超知能AIが生まれないのか?の話をします。その答えを知るために、まず、知能とはどのような状況で最大限の能力を発揮してきたのか?を考えてみましょう。
私たちは知能と聞くと「頭の回転の速さ」や「IQの高さ」、「知識量の多さ」、あるいは「発想力の豊かさ」といった、一個人の内面にあるスペックを思い浮かべがちだと思います。しかし、認知科学には「拡張された認知」という考え方があり、知能とは個人の脳内に閉じたものではなく、環境や他者との関係性の中に存在する、という捉え方をします。
私たちは昔から、分からないことがあれば人に聞き、本を読み、検索エンジンで調べる、ということをしてきました。道具を使い、他者と役割分担をしながら課題を解決してきたからこそ、人類はここまで発展できたのです。つまり、知能とは本来「関係的」なものだったと言えます。
人類が今日のような高度な文明を築けたのは、個人の脳が急激に巨大化したからではなく、自分一人では処理しきれない膨大な体験や知識を、言葉や文字、さらには法律や組織といった仕組みを使って外部に蓄積し、みんなで共有してきたからです。
しかし、ここで疑問が生まれた方もいるのではないでしょうか。個人が全知全能になれない理由は分かったとしても、世界中の膨大な情報をすでに学習している最新のAIなら、単体でスーパーAIになれるのではないでしょうか。なぜビッグデータを持つAIですら、単体では限界を迎えてしまうのか。
その答えは、「異なる視点による対話が知能の最大化には必要だからです。。どれほど膨大なデータを持っていても、単一の視点や一方通行の計算処理だけでは、思い込みやデータの偏り(バイアス)から抜け出すことができません。
もしもチーム内で対話がなかったとしたらどうなっているでしょうか?リーダーの意見に迎合し、メンバーの視点を採り入れず、上が決めた意思決定に従うしか無いチームが素晴らしい成績を挙げられるとは到底思えないはず。
チームの能力を最大化させるためには、異なる視点を持ったメンバーが集まり、意見を出し合い、仮説を立て、それに対して反論をぶつけ、さらに違った代替案を出し、最も価値基準に合った結論を話し合う、といったディスカッションが必要不可欠です。
つまり、知能の最大かとは、知識の量や情報処理のスピードは必要条件に過ぎず、最も大切なことは異なる視点の統合だということです。
知性とは単なる計算力ではなく、対話プロセスをマネジメントする能力そのものなのです。だからこそ、AIが進化すればするほど人間が不要になるのではなく、むしろ人間とAIがチームを組まなければならなくなっていくってことですね。Dr.ベガパンクも7人の視点を必要としてますしね。尾田っちすごい。
ひとりの天才やひとつのAIの中ですら、知能を高めるためには内部に小さな社会を作らなければならない。このことからも、すべてを一台でこなす孤立した単一のスーパーAIという考え方が、知能の本質から離れていることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
AIを異なる視点を持つチームメイトとして編成する
AIを孤立したツールではなくチームメイトとして捉えるとき、重要になるのが「お互いの弱点をどう補い合うか」という視点です。人間にもAIにも、明確な得意分野と苦手分野が存在します。
まず、AIの苦手分野を見てみましょう。AIは前提条件を疑うのが苦手で、与えられた枠組みの中で思考します。また、文脈を履き違えてしまったり、一見すると正しそうな文章でそれらしく間違えた情報を出力してしまったりする欠点があります。情報の蓄積や分析は大得意ですが、その情報が持つ意味合いや価値を肌感覚で理解することはできません。
一方で、人間の苦手分野はどうでしょうか。人間はバイアスだらけの存在です。自分の経験や感情に飲み込まれやすく、論理的な思考が歪んでしまうことが多々あります。さらに、脳の情報処理能力には物理的な限界があり、何千ページものデータを一瞬で読み解くような作業は不可能です。
つまり、人間が意味付けや価値判断を担当し、AIが情報処理や多角的な分析を担当すれば、お互いの弱点を完全に打ち消し合うことができます。人間は判断と全体のシステム設計をメインで行うアーキテクチャでありチェッカーとして機能する。そしてAIには情報の蓄積と分析を担わせ、AI同士を衝突させて再評価させる。このように明確な分業を行って役割を与えることこそが、知能を最大化させる鍵となります。
あなたが今、AIに対して、
AIの使い方をテーマにしたブログを執筆して
自社製品の戦略を考えて
プレゼン資料を作って
などと指示をしているのであれば、ここらへんの補完関係を意識してみると、格段によいアウトプットが得られるはず。
では、実際にAIをチームに組み込むにはどうすればよいのでしょうか。
一般的なチームでのディスカッションは、以下のようなステップで進んでいくと思います。
問いを立てる(課題の定義)
ゴールを決める(成功基準の設定)
何を重視するのかを決める(優先順位と価値判断)
視点を出す(初期アイデアの発案)
異なる視点を出す(批判・リスクの提示・対案)
また別の視点を出したり、視点同士を比較・競争させる
それに基づいて意見を統合する(折衷案・最適解の構築)
最終決定を行う(実行の決断と責任)
このプロセス全体を見渡したとき、人間とAIの役割はきれいに分かれます。
人間が担うべきなのは、最初の「問いを立てる」「ゴールを決める」、「何を重視するかの価値基準を作る」こと、そして最後の「最終決定を行う」ことです。統合作業の場面では、何を重視するのかをあらかじめ定め、許容できるリスクの範囲と見比べながら意思決定のプロセスをまとめていきます。
そしてAIが得意とするのは、中盤の「視点を出す」「異なる視点を戦わせる」「意見を仮統合する」という情報処理のフェーズです。AIに異なった視点の意見をわざと出させ、それらを相互に批判・評価させて研磨させる。このAI同士の衝突プロセスをうまく挟むことこそが、AIの最も賢い使い方であり知能を最大化させる方法だと言えます。
実践ステップ:AIチーム運用の5ステップ
それでは、日々の業務から個人的なプロジェクトまで、どのようなタスクにも応用できる「AIチーム運用」の具体的な実践手順を見ていきましょう。
ステップ1:問い・ゴール・価値基準を最初に固定する
まずは人間が主導権を握り、前提条件を固めます。ポイントは、AIに意見を聞く前に「譲れない価値基準(何を最重視するか)」を人間側で決めておくこと。これを最初にやらないと、AIが出してきたそれっぽい正論や魅力的な提案に人間が引っ張られ、軸がブレてしまいます。
例えば、
ブログ記事の執筆
問い:読者の悩みをどう解決するか
ゴール:最後まで読まれて行動を起こさせること
価値基準:専門用語を使わず、とにかく分かりやすさを最優先する
(新規事業・商品企画)
問い:競合が多い市場で自社が生き残るにはどうすればいいか
ゴール:社内プレゼンを通過させ、予算を獲得すること
価値基準:他社にはない独自性を重視し、既存の成功パターンに捉われないアイデアを最優先する
(業務改善・ツール導入)
問い:カスタマーサポートの問い合わせ対応時間を短縮するにはどうすればいいか
ゴール:月間の対応コストを20%削減すること
価値基準:顧客満足度を落とさないことを絶対条件とし、AI導入による返信精度の高さを最優先する
(採用・イベント企画)
問い:自社の理念に共感してくれる新卒学生をどう集めるか
ゴール:プレエントリー数を前年比1.5倍に増やすこと
価値基準:人数の多さよりもミスマッチ防止を第一とし、自社の厳しい一面も含めてリアルな実態を隠さず伝える姿勢を最優先する
って具合。ガッツリ決めなくてもいいですが、頭の中にあるものを書き出しておく、ぐらいのイメージです。
ステップ2:タスクを工程に分解し、どこでAIを使うか判断する
いきなり「ブログを書いて」とざっくり丸投げするのではなく、タスクを作業の工程(プロセス)に分解し、どのフェーズでAIをチームメイトとして活用するかを人間が設計します。
たとえば「ブログ執筆」というタスクなら、以下のように工程を分解できます。
企画・ネタ決め
読者の課題や疑問の洗い出し
構成案(目次)の作成
ドラフト(本文)の執筆
推敲・ロジックのチェック
誤字脱字・ファクトのチェック
この工程全体を見渡し、「どこを人間が担い、どこにAIの知能を借りるか」を割り振ります。すべてをAIに任せるのではなく、「読者の課題洗い出し」や「推敲・チェック」といった、多角的な視点が必要な工程に狙いを定めてAIを投入します。
タスクの各フェーズで以下の質問を投げかけてみるとよさげです。
多角的な視点が必要か? (「この工程で、見落とし・リスク・反対意見などの『自分とは異なる視点』をたくさん洗い出したいか?」)
大量の情報整理やパターン出しが必要か? (「ゼロから複数の案をブレインストーミングしたり、膨大なデータをまとめたりする作業か?」)
自分一人だと「思い込み(バイアス)」が入りやすいか? (「自分の嗜好や慣習に偏りがちで、客観的なファクトチェックや批判的なレビューをしてほしいか?」)
正解がひとつではなく、比較検証したいか? (「複数のシナリオや選択肢を並べて、それぞれのメリット・デメリットをぶつけ合わせたいか?」)
「意味付け・価値判断・最終決定」が含まれていないか? (「責任を取ったり、人の感情や組織の文脈を汲み取ったりする『人間にしかできない判断』以外の部分か?」)
ステップ3:AIに具体的な「視点」を与えて検討させる
AIを投入する工程が決まったら、そこに「どんな視点」を投げ込むかを設計して指示を出します。
プロンプトでAIに役割を与えろ!というのは初期からいわれていたことですが、役割によってAIの頭が良くなったり、正しいことを言うようになったりはしない、という点に注意しておきましょう。
どういうことかと言うと、「あなたは一流のライターです。」や、「ノーベル賞を受賞した医者です。」のような役割の与え方をしたとしても、語り口調や雰囲気がそれっぽくなるだけで、アウトプットの質が向上するわけではないのです。
ココで重要なのは、どの視点でアウトプットしてほしいのか?を指示することで、
(ターゲット目線): 「普段はスマホの基本操作しか使わない、ITに苦手意識がある60代女性の目線で、この操作画面の分かりにくい点を挙げてください」
(当事者目線): 「共働きで毎晩の夕飯作りに15分しか時間をかけられない、未就学児を育てる親の目線で、この時短調理グッズの不満点を出してください」
(現場目線): 「本社の決定に対して不満を抱きがちな、地方店舗の契約社員の目線から、この新マニュアルの受け入れられにくい部分を指摘してください」
(対立・批判目線): 「このプロジェクトに予算を奪われることを警戒している、別部署の部長の目線から、この企画書の詰めの甘い部分を徹底的に追及してください」
(制約目線): 「資金力のある競合他社に参入されたら一発で崩壊する、資金力のない創業1年目のスタートアップ企業の目線で、このビジネスモデルのリスクを洗い出してください」
といった、立場や状況を含めたプロンプトにするのが望ましいです。
知能を高めるためにAIチームへ組み込むのにおすすめな「汎用的な視点」には、以下のようなものがあります。タスクの性質に合わせて組み合わせてみてください。
批判・反対派の視点: 案の穴や弱点、ツッコミどころを容赦なく指摘する視点
リスク・セキュリティの視点: 炎上リスク、法的問題、個人情報やコストの懸念を洗い出す視点
ファクト・論理チェックの視点: 前提条件の誤り、根拠の薄さ、主張の飛躍を見抜く視点
初心者・未経験者の視点: 専門用語や前提知識についていけない人の困惑を代弁する視点
競合・ライバルの視点: 「自分ならもっと良い案を出す」と対抗してくる視点
当事者・ターゲットの視点: 実際にそのサービスや文章に触れる人の感情やリアルな事情を代弁する視点
保守的・慎重派の視点: 変化を嫌い、従来通りのやり方を好む人の抵抗感を代弁する視点
極端な効率主義の視点: 無駄を一切省き、最短・最速・最安だけを追求する視点
ステップ4:異なる視点をAI内部で戦わせ、意見を統合させる
出揃った異なる視点を、AIの内部でさらに戦わせます。お互いの批判や懸念点を受け止めさせた上で、ステップ1で決めた価値基準に沿った解決策を作らせるプロセスです。
「いま出た批判的な視点と初心者の困惑を踏まえた上で、最初に設定した『分かりやすさ最優先』という価値基準を損なわないよう、文章の構成を修正した統合案を提案してください」などと指示を出します。これにより、単なる思いつきを超えた、現実的で洗練されたアウトプットが手に入ります。
ステップ5:価値基準に照らし合わせ、人間が最終決断する
最後に、上がってきた統合案を人間が吟味し、意思決定を下します。
いくらAI同士の議論が洗練されていても、最終的な裁定を下せるのは人間だけです。ステップ1で設定した価値基準に照らし合わせ、「本当にこのリスクを取れるか」「自分の美学や倫理観に反していないか」を確認します。人間が責任を持ってGOサインを出すことで、はじめてタスクが完了します。
ここをサボってしまうと、今までの努力が水の泡。AIを成果物を出力させるただのツールとして使ってしまったことになるので、最も重要なプロセスと言えるでしょう。
まとめ:AI時代に求められる「指揮者」としての人間
ここまで見てきたように、「単一のスーパーAIがすべてを解決してくれる未来」を待つ必要も、それを恐れる必要もなくて、人間の役割が変化していることに順応することに意識を向けるのが大事。
知能の本質とは孤立した能力ではなく、対話と関係性の中に立ち現れるネットワークでありました。とどのつまり、AIの役割は「膨大な情報処理と多角的な視点を提供し、議論を深めること」であり、問いを立て、価値基準を示し、最終的な判断と責任を引き受けること」これこそがこれからの人間の役割になります。
これからの時代に求められるスキルは、作業を完璧にこなすプレイヤーとしての能力ではなく、AIという多様な視点を持つチームメイトを招き入れ、彼らに適切な役割を与え、巻き起こる議論をまとめて一つの答えを出す「マネジメント能力がますます重要になってくるってことですなー。
おーしまい。