毎日浴びるほどお酒を飲んでいた私ですが、酒断ちから3年が経過しようとしております。日中の集中力が改善したような、お腹の調子が改善したような、イヤなことがあればすぐにお酒に逃げたくなるクセがなくなったような気がしているわけですが、そろそろ解禁しようかなと思っております。する時に気になるのが、かつてのような健康ダメージを受けないで済むお酒の安全ライン。
ということで、お酒の健康リスクや一日に飲んでもいい量などを調べてきたので書いてみまーす。
アルコールは一滴でもアウト?
結論から言うと、お酒は一滴でも飲んだ時点で体には何らかの害があるということ。酒は百薬の長といわれたのは今は昔。現在では百毒の長ということを裏付けるデータが揃ってきています。
科学的根拠の信頼度が高い順にアルコールのもたらす害について見てみましょう。
【エビデンス:最強】(メタ分析・大規模コホート研究により確定)
全身のがんリスクの増加(特に消化器系・乳がん)
アルコールそのものとその代謝物であるアセトアルデヒドは、国際がん研究機関IARCにおいて最高ランクのグループ1(ヒトに対する発がん性あり)に指定されています。これは、「発がん性があるという証拠の確実さ」において放射線やアスベストと同等のレベルにあることを意味します。これは放射線やアスベストと危険レベルが同等という意味ではありませんが、わずかな飲酒量であっても食道がんや女性の乳がんなどの発症リスクは確実に高まります。心血管疾患(高血圧・脳卒中)のリスク増加
「少量の飲酒なら心臓病を予防する」という過去のデータ(Jカーブ効果)は、近年の解析によって「(元々健康な人が適度にお酒を飲んでいただけという統計のエラー)」であった可能性が指摘されています(健康労働者バイアス)。現在の大規模研究では、飲酒量が増えれば増えるほど高血圧や脳卒中のリスクは直線的に高まることが証明されています。
【エビデンス:高】(複数の質の高い研究で結果が一致)
脳容積の減少と認知機能への影響
お酒は脳の容積減少と関連していることが示唆されています。大規模な脳イメージング研究では、毎日ビール1缶程度(約1〜2アルコール単位)の軽度から中等度の飲酒であっても、飲まない人に比べて脳全体の容積縮小(特に海馬など)に関連し、将来的には認知機能の低下を加速させるリスクが懸念されています。睡眠構造の破壊
アルコールは一時的に入眠を早めるように見えて、夜間の後半の睡眠(レム睡眠など)の構造を破壊します。結果として深い休息が取れなくなり、翌日のパフォーマンスや代謝機能を確実に低下させることが分かっています。
【エビデンス:中〜低】(強い懸念点・今後のさらなる検証が待たれるもの)
メンタルヘルス(うつ病・不安障害)の悪化
飲酒時は一時的に気分が晴れますが、アルコールが抜ける過程で脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)のバランスが急激に崩れます。これにより、長期的には不安やうつ傾向をかえって助長するリスクが指摘されています。腸内環境の悪化(リーキーガット)
アルコールは腸壁のバリア機能を一時的に弱め、本来血液中に入るべきではない毒素などが漏れ出す「リーキーガット症候群」を誘発し、体内の慢性炎症を引き起こす可能性があると言われています。
【冷徹な結論】健康リスクを最小化する飲酒量は「ゼロ」である。 2018年に世界最高峰の医学誌『The Lancet』に掲載されたグローバル解析において、アルコールは「1mg(最初の一滴)でも飲むと、何らかの健康被害リスクが生じる」と結論づけられています。
お酒にはメリットもある
ここまでアルコールのデメリットばかりを見てイヤーな気分になってきたかと思いますが、アルコールの「社会的・精神的なベネフィット」がもたらす間接的な効果も捨てがたいので見てみたいと思います。お酒にはメリットもあるよってことですね。
強力なリラックス効果(社会的潤滑油)
アルコールは脳のGABA受容体に作用してエンドルフィンの放出を促し、脳の緊張を解きほぐします。一時的に不安や恐怖心を和らげ、初対面の相手とも打ち解けやすくする社会的潤滑油としての即効性は他の物質では代替しがたいメリットです。「つながり」による社会的孤立の防止
オックスフォード大学の進化人類学者ロビン・ダンバーらの研究によると、適度に社会的飲酒(地域のパブや居酒屋などでの交流)を行う人は、そうでない人に比べて信頼できる友人の数が多く、これがコミュニティへの帰属意識や人生の満足度を高める重要なファクターとなっていることが示されています。公衆衛生において「社会的孤立」は強い死亡リスクとされており、お酒が媒介する強固な人間関係がメンタルヘルスにおいてプラスに作用する側面は無視できません。
リスクを最小限にしてメリットを享受できるアルコールの分水嶺
「少しでもリスクがあるなら飲むな」というのは簡単ですが、人生の楽しみや社交をすべて捨てるのは味気ないもの。私のように内向的で人見知りなタイプは特に新しいコミュニティに入った時の酒の場に助けられることもありますからね。では、私たちが健康を維持しつつ人生を楽しむために目指すべき「現実的な落とし所」はどこにあるのでしょうか。
近年の大規模なデータ解析により、「このラインを超えると、全死亡率や特定の疾患リスクのカーブが急激に垂直立ち上がりするポイント(分水嶺)」が明確になっています。それは、
アルコールは週に100gまでにしとけ!
ってことです。世界各国の高精度な飲酒データを統合解析した結果、純アルコールの摂取量が「週に100g」を超えた時点から、全死亡リスクの上昇および期待寿命の短縮が急激に加速することが明確になりました。これを超えての飲酒は、まさに「寿命の前借り」の領域に突入します(※100g未満なら完全に安全という意味ではありません)。
参照元:The Lancet - Risk thresholds for alcohol consumption
日本の厚生労働省のガイドラインでも、生活習慣病のリスクを高める飲酒量は「純アルコール換算で男性40g以上、女性20g以上/日」と定義されており、週換算すると概ねこの100g〜140g前後のラインに収束します。
純アルコール週100gを、私たちが普段飲む主要なアルコール飲料に換算すると、
ビール(5%)
2リットル:缶(350mL)約6本日本酒(15%)
約666mL:3.5合ワイン(12%)
約833mL:グラス7杯ウイスキー(40%)
250mL:ハイボール8杯
これはあくまで平均的な成人の目安量なので、年齢や性別、もちろん体質によっても異なりますが、ビールの350mL缶なら1本でアウトっていうのはなかなかキツイ。それならどうにか酒のダメージを和らげる方法は無いかなとなるのが心情。次項で見ていきましょう。
酒のダメージを緩和する方法は?
前提として、アルコールによる発がんリスクや遺伝子へのダメージを完全に「無害化」する方法は存在しません。しかし、急激な血中アルコール濃度の高いスパイクを抑え、肝臓や胃腸への過剰な代謝負担を「緩和する」ために有効とされる生理学的なアプローチは存在します。でもやらないよりは絶対にやったほうがいいので、ぜひ押さえておきましょう。
水をアルコールと同量以上飲む
お酒を一口飲んだら、同量以上の水を飲む。これにより胃腸内でのアルコール濃度を希釈し、脱水を防ぐことで血中濃度の急激な上昇を抑え、肝臓の代謝負担を物理的にサポートできます。絶対に「空腹」で飲まない
胃が空っぽの状態でアルコールを入れると、一瞬で胃壁や小腸から吸収されて肝臓を直撃します。事前にチーズやナッツ、あるいはオリーブオイルなどの脂質やタンパク質を含む食事を胃に入れておくことで、アルコールの吸収速度を遅らせ、急激な酩酊を防ぐことができます。飲む「前」に運動を済ませておく
飲酒後の運動は不整脈や重篤な脱水を誘発するため禁忌ですが、日常的な運動習慣(あるいは飲酒前の適切な運動)がある場合、アルコールによる代謝低下や脂肪肝のリスクを一定程度相殺・軽減できる可能性が疫学研究で示唆されています。休肝日を「連続して」設ける
お酒を飲まない日を1日だけポツンと作っても、肝臓や胃腸の粘膜は完全に修復されません。ダメージを緩和するためには、連続して48時間以上アルコールを完全に断つ期間(週に2日連続の休肝日)を作るのが最も効果的とされています。
で、結局どうすれば?
アルコールが生物学的に有害な物質であることは、現代科学において疑いようのない事実です。
しかし歴史を遡れば、人類は原始時代、土に落ちて自然発酵したアルコールを含む果実を好んで食べていた頃から、この物質と付き合ってきました。お酒によってコミュニティの結束を強め、個人の過剰なストレス(認知負荷)を緩和させてきた社会的機能もまた、無視できない事実です。
お酒は盲信することも忌避することもよくなくて、社交の場では飲めばいいし、週に一度家族で嗜むのもいいし、って感じでコミュニケーションを促進するツールとして取り入れるのがいいんだなと勉強になりました。そんで飲むときにはやれることは全部やる。運動と水分摂取、食事の順番などに気を配りながら酒の席を楽しむこととします。はやく飲みてー